6月定例会 平成26年6月17日(火)一般質問
(1)デジタルアーカイブ戦略について
   1.デジタルアーカイブ・マネジメントについて
   2.市史に関する情報の一元化について
(2)地域資料のデジタル化について
(3)デジタル絵本貸出事業につい
(4)駅における図書返却ポストの設置について


○神坂達成議員まず、1番目としまして、(1)デジタルアーカイブ戦略と図書館機能の強化について質問させていただきます。
本年度より20年間の長期に及ぶ市史編さん事業が開始されました。業務は新設されたアーカイブズセンターが中心となりますが、市史編さんという性質上、図書館や博物館、時には個人の所有物なども対象になることが予想されます。予想される品々は公文書、写真、古書、希少書、古地図、文化財、映像など多数に及びます。しかし、これら広範囲かつ長期に及ぶ市史編さん事業において、誰がどのようにコーディネートするのか、その責任体制も含め、現段階では不明確であると言わざるを得ません。この点について御見解をお示しください。
続いて、市史に関する情報の一元化について、担当課にヒアリングをしたところ、デジタル化された市史情報は、アーカイブズセンター、中央図書館、博物館がそれぞれのホームページで公開し、リンクさせるという古典的な方式を御検討のようですが、この方式では情報リテラシーの観点からも貧弱この上ありません。今の時代、検索してヒットしなければ、例え現物があったとしても、社会的にはないのと同じと言われるように、市史についても情報を一元化し、発信力の強化を図るべきです。
私の調べたところ、この点で最も先進的な取り組みをされているのは、秋田県立図書館デジタルアーカイブです。同システムでは、図書館、文学資料館、近代美術館、公文書館、博物館、埋蔵文化財センターの情報が一元化され、県の歴史情報の発信拠点となっています。さいたま市は、この方式をお手本とするべきです。後になっての方針転換では、税金の無駄遣いだとのそしりは免れません。市史編さんは長期にわたる事業だからこそ、スタート時の明確な戦略とビジョンが大切です。この点について御見解をお聞かせください。
(2)地域資料のデジタル化について伺います。過日、札幌市中央図書館へ視察に行ってまいりました。札幌市では、地域資料のデジタル化の一環として、月刊広報紙広報さっぽろを昭和25年の創刊号から現在に至るまで、すべての号をデジタル化し、情報発信していました。この取り組みについて、立命館大学、湯浅俊彦准教授は、国会図書館が所蔵していない地域資料が多く、そういった図書を電子化するのは地域図書館の役割である。購入できるものを買うだけでなく、利用者に何が必要かを考え、資料を編集し、発信しているところに意義があると称賛しています。本市においても、旧4市時代のものを含め、市報や議会報を電子化し、地域資料として発信すべきと考えますが、御見解をお聞かせください。
続いて、(3)デジタル絵本貸出事業について伺います。
札幌市では、政令市で初となる電子書籍貸し出しサービスの導入に向け、タブレット端末を市民に貸し出すなど実証実験に取り組まれてきた先進都市です。電子書籍と一言で言ってもさまざまなジャンルが存在し、貸し出すためには出版社のほかにも、写真、イラストなど複数の許諾が必要となり、簡単なことではありません。しかし、デジタル絵本のページをめくって強く感じたことは、このすばらしい事業をさいたま市でも実現したいという思いでした。この事業が実現すれば、母親が小さな子どもを連れて図書館に行く苦労も軽減されると同時に、子どもたちがいつでも自由に絵本に親しむことができるようになるのです。また、出版社や作者とコラボできれば、デジタル絵本を読んで、いい内容だったので購入しようという呼び水となり、ウイン・ウインの関係を築ける可能性もあります。お話を伺った札幌市の担当者も、デジタル絵本には将来的な可能性が最もあると語っておられました。近い将来、本市においても図書館システムの改修が控えています。メーカーによっては、現在のシステムをバージョンアップすれば、新たなシステムを構築しなくても電子書籍の貸し出しシステムが附帯されており、過大な予算の必要がないことも勉強させていただきました。本市として、このデジタル絵本貸し出しという新しい分野へチャレンジすべきと考えますが、御見解をお聞かせください。
(4)駅における図書返却ポストの設置について伺います。
昨今、活字離れが懸念される中、本市では平成24年度、市民1人当たりの図書貸し出し数が政令市の中で第1位となったことは、教育都市として誇らしい限りです。一方で、貸し出した図書の5.4%が期間内に返却されていないという現実もあります。中でも督促の努力虚しく、2年以上も返却されていない図書や督促経費は10年間で約1億1,000万円の損失と試算できます。これらの多くは、決して悪意を持って行われているのではなく、ただ単に返却を忘れたり、仕事が忙しく図書館に寄ることが困難であったりすることが大きな要因であると推察します。そこで、利用者の利便性向上という観点から、多くの人々が利用する駅に返却ポストを設置することを提案いたします。
こちらをごらんください。こちらは、横浜市で実施しております返却ポストでございます。この駅は東急田園都市線、たまプラーザ駅、通称たまプラ駅で撮影したものでございます。全体的には、駅の中でこのような形で設置されております。ちょっと暗くてごめんなさい。わからなかったですね。
この他調査したところ、横浜市のほかにも京都市、福岡市でも実施されておりました。日本一の読書のまちをスローガンに掲げるさいたま市であるからこそ、やるべき事業ではないでしょうか。見解をお聞かせください。ここで切ります。
○清水勇人市長
神坂議員の御質問の1 デジタルアーカイブ戦略と図書館機能の強化について、・ デジタルアーカイブ戦略について、1.デジタルアーカイブ・マネジメントについてお答えいたします。
本市では、市の歴史的変遷の過程を記録し、未来へ継承するため、さいたま市史の編さんに着手することといたしました。この事業は、本市の歴史や特性を明らかにすることで本市への愛着を育み、収集した歴史資料の活用により市民文化の向上に寄与し、調査研究の成果を市政発展の羅針盤としていくことを目指しております。市史編さんの効率的な推進に向けましては、平成25年度に編さんの目的や基本姿勢、推進体制等を整理いたしましたさいたま市史編さん基本方針を策定し、この基本方針に基づき、今年4月には市史編さんの専任組織として総務課の中にアーカイブズセンターというものを設置いたしました。今後は、このアーカイブズセンターが中心となって編さん事業を責任を持って推進してまいります。
次に、2.市史に関する情報の一元化についてお答えいたします。
さいたま市史編さん基本方針では、収集した歴史資料の管理や活用に加え、ICTを利用した積極的な情報発信を基本姿勢として掲げております。これに基づき、現在アーカイブズセンターでは所蔵する公文書、写真、地図等の整理を行い、その中から歴史的価値が高く、市民の皆様に関心を持っていただけるものを厳選して、資料のデジタル化を進めることとしております。
議員御指摘のように、本市では図書館や博物館においても歴史資料を所蔵しており、利用者の利便性の観点からは、すべての歴史資料の情報を一元化して提供する仕組みが必要になると考えております。今後、情報の一元化に向けて、データ総量の把握や他のシステムとの連携あるいは調整といった課題の解決に向けまして積極的に検討を進めていきたいというふうに考えております。
○山﨑秀雄総務局長
神坂達成議員の御質問の1 デジタルアーカイブ戦略と図書館機能の強化について、・ 地域資料のデジタル化についてお答えいたします。
アーカイブズセンターにおいては、旧市時代の市報等を含め、古文書、公文書、刊行物、写真、地図など歴史資料を所蔵し、金具類の除去や和紙を使った裏打ちなど、劣化や散逸を防止するための措置を講じながら、整理、保存を行っております。デジタル化につきましては、こうして整理が完了した歴史資料の中から、写真や地図など市民の皆様が親しみやすいものを優先し、順次進めてまいりたいと考えております。市報等につきましても、刊行当時の政策や事務事業、市民生活等を知るための貴重な地域資料としてデジタル化し、ホームページを活用して公開していくことを検討してまいります。
○上亟啓介副教育長
神坂達成議員の御質問の1 デジタルアーカイブ戦略と図書館機能の強化について、・ デジタル絵本貸出事業についてお答えいたします。
札幌市の図書館は、平成15年度から地域資料のデジタル化に着手しており、デジタル化した資料をホームページで公開しております。また、平成23年度の電子図書館の実証検証を経て、平成26年10月ごろから電子書籍やデジタル絵本の貸し出しを始める計画であると聞いております。
さいたま市の図書館におきましては、電子書籍の貸し出しを始める前に、絶版等のために入手困難な地域に関する図書のデジタル化を行ってまいりたいと考えております。現在、デジタル化する図書の選定を進めており、今後、著作権の許諾やホームページに公開する方法についても検討してまいります。
電子書籍の貸し出しにつきましては、地域資料のデジタル化後、デジタル絵本の貸し出しも含めて、先行する札幌市の動向を参考に進めてまいります。
次に、(4)駅における図書返却ポストの設置についてお答えいたします。
駅への図書返却ポストの設置につきましては、市民の皆様の利便性が高まり、図書返却率の向上につながるものと考えております。他の自治体の先進的な取り組みといたしましては、駅、市の施設や民間商業施設などに図書の返却ポストを設けている事例がございます。図書の回収には時間がかかるために、仮に駅前広場などに図書返却ポストを設置した場合、車両駐車スペースの確保が必要となります。そのために、現在のところ、駅周辺の利用可能なスペースの有無や設置環境について調査を進めており、今後、関係機関と調整を図り、設置に向けて検討を行ってまいります。