1 自転車交通の総合安全対策について
(1)自転車交通の総合安全対策における世代別安全教育と啓発について
①小学生への自転車免許の交付と、中高生への事故・運転者責任・交通違反に対する制裁事例による教育やスケアード・ストレイト教育技法の全校実施と、高齢者に対する安全教育と自転車に関する知識・技能の指導の実施について
②小中高生へのTSマークや自転車任意保険加入啓発と、13歳未満へのヘルメット着用努力義務の啓発推進について
③交通公園もしくはその機能を有する公園の設置と、子供たちや高齢者の集う屋内施設への自転車シミュレーター等の設置について
(2)自転車交通総合安全対策における自転車交通環境整備について
①さいたま市都市交通行政における自転車交通体系の策定の必要性について、及び、部局横断的なプロジェクトチーム編成の必要性について
1 自転車交通の総合安全対策について。
○神坂達成議員 埼玉県では、人口1人当たりの自転車保有台数が全国で1位となりましたが、中でもさいたま市は人口も多く、統計こそ明らかにされていませんが、保有台数は県内トップと推定されます。現在、自転車における交通ルールやマナー違反に対して、警察からの取り締まりも強化されていますが、さいたま市としても、ソフト、ハード両面からの自転車交通の総合安全対策の策定が必要であると感じているのは私だけではないはずです。
しかし、一方で、子どもたちや高齢者による死亡事故や事故件数は増加の一途をたどっており、自転車関連の事故は交通事故全体の2割を占めており、自転車乗車中に死傷した3分の2に何らかの法令違反が認められる状況です。
さらに詳しく事故の状況などを分析してみると、年代ごとに、はっきりとした問題点が浮かび上がってきます。例えば小学生は交通ルールの基本教育を受ける機会が極めて少ないため、一時停止や危険箇所を認識できずに事故に遭遇しています。中学生、高校生では、事故発生率が最も高く、無灯火やルール、マナーの欠如、スピード違反による事故が顕著に見受けられます。主婦や大学生、社会人等では、軽車両としてのルール、マナー違反による事故が多く、正しい自転車利用の啓発が必要です。高齢者では、死亡率が最も高いことから、安全教育と自転車に関する知識や技能の指導などが必要です。
この問題点を改善するため、自転車総合安全対策における世代別の教育プログラムを構築し、体系的な交通安全教育が必要であると考えます。特に自転車利用率の高さ、事故発生割合の高さを考えると、これまで小学生を中心に行っている安全教育を中学生や高校生に対して充実させていくことが、事故減少に向けた重要課題です。市民の安全を守るという観点から、自転車を運転する人々に対して、しっかりとした施策を打ち出すべきです。
そこで、お伺いします。自転車交通の総合安全対策における世代別安全教育と啓発について、① 小学生に対しては自転車運転免許の交付による教育効果を高める取り組みを実施すべきと考えますが、見解を伺います。
また、事故発生率が最も高い中学校や高校の全校で事故・運転者責任及び交通違反に対する制裁の事例による教育やスケアード・ストレイト教育技法を導入した交通安全教育を行うべきと考えますが、見解を伺います。
さらには、高齢者に対して安全教育と自転車に関する知識や技能の指導を実施すべきと考えます。この3点について見解を伺います。
平成17年11月、携帯電話を使用しながら無灯火で被害者に大きな後遺症を与えたとして、当時16歳の女子高生とその父親に対して5,000万円の損害賠償の支払い命令が横浜地裁で言い渡されました。同じような過ちがさいたま市で繰り返されないよう、行政として任意保険の加入を奨励すべきと考えます。
そこで、お伺いいたします。まず、事故に備えた小中高生へのTSマークや自転車任意保険の加入に関する必要性を痛感していますが、市としての見解を伺います。
次に、道路交通法改正に伴う13歳未満へのヘルメット着用努力義務について、本市小学生以下に対する啓発運動を行うべきと考えますが、見解を伺います。
また、子どもたちが楽しみながら交通ルールを学べるよう、交通公園もしくはその機能を有する公園を設置すべきと考えますが、見解を伺います。
最後に、子どもたちや高齢者が集う屋内施設に、道路に潜む危険性などを体験学習できるよう自転車シミュレーター等を設置すべきと考えますが、見解を伺います。
続いて、 自転車交通総合安全対策における自転車交通環境整備についてお伺いいたします。
本年10月25日に警察庁より発表された通達では、良好な自転車交通の実現のためには推進すべき対策として、自転車の通行環境の確立と自転車専用の走行空間の整備が道路管理者に求められています。本文では、自転車専用の走行空間を整備するとともに自転車と歩行者との分離を進めていくことが不可欠であると結論づけています。
一方、警察の取り締まりが強化され、車道への走行を促されても、現状の道路環境では怖くて車道を走れないとの声が市民から聞かれます。警察からの分離要請と市民からの声をどのように実現していくのか、大きな問題です。この問題を解決するためには、市としてフレキシブルで弾力的なプランが必要不可欠です。都市交通行政における自転車交通体系の位置づけについて、さいたま希望(ゆめ)のまちプラン、第9次さいたま市交通安全計画、総合都市交通体系マスタープラン、都市交通戦略、交通バリアフリー基本構想等を確認しましたが、現段階においてさいたま市における自転車交通体系の位置づけが全くと言っていいほどありません。完全に抜け落ちている状態です。
そこで、都市交通行政における自転車交通体系を早急に策定すべきと考えまずか、見解を伺います。
さらには、その関連する部局は多局にまたがることから、部局横断的なプロジェクトチームを編成すべきと考えますが、見解を伺います。
○小山茂樹市民・スポーツ文化局長 神坂議員の御質問の1 自転車交通の総合安全対策について、 自転車交通の総合安全対策における世代別安全教育と啓発について、① 小学生への自転車免許の交付と、中高生への事故・運転者責任・交通違反に対する制裁事例による教育やスケアード・ストレイト教育技法の全校実施と、高齢者に対する安全教育と自転車に関する知識・技能の指導の実施についてお答えいたします。
本市では、児童生徒による交差点への飛び出し事故や自転車乗車中の事故などが増加していることから、交通安全教育の徹底を図っているところでございます。
自転車運転免許につきましては、自転車の安全な乗り方を指導し、交通安全に対する意識を高めることができるものであり、将来にわたり交通事故防止に効果があると認識しております。昨年度は、各警察署と連携を図り、小学校22校の3、4年生を中心に実施し、2,360名に自転車運転免許証を交付したと伺っております。今後は、自転車運転免許制度を導入する学校がふえるように、各警察と一層連携を図ってまいります。
また、交通安全教育の充実を図るために、各学校では全校集会や交通安全教室、学級指導などにおいて、自転車運転による事故事例や自転車事故で問われる責任、自転車での加害事故例などを具体的に取り上げ、指導しております。今後も交通事故防止及び自転車交通ルール遵守の徹底を図るよう、引き続き指導してまいります。
スケアード・ストレイト技法につきましては、模擬交通事故の実演を通じて交通安全教育を効果的に実施するものであると認識しております。昨年度、県、警察等と連携を図り、各学校の安全教育の担当者を対象に、その教育的効果について研修会を実施いたしました。今年度は市内中学校1校と高等学校1校の生徒を対象にスケアード・ストレイト技法を用いた交通安全教育を実施したところです。今後は、より多くの学校で実施し、一層の交通安全教育の充実を図ってまいりたいと考えております。
次に、高齢者に対する交通安全教育につきましては、市内の老人クラブ、社会福祉協議会、社団法人シルバー人材センターや老人福祉施設に対し、本市交通教育指導員による交通安全教室を実施し、自転車の交通安全対策も行っております。また、要望により自転車に関する知識、技能の習得についても実施し、多くの高齢者に参加していただいており、平成22年度においては40団体、1,649人に参加いただきました。引き続き、より効果的な交通安全教室の実施の拡充について努めてまいりたいと考えております。
次に、② 小中高生へのTSマークや自転車任意保険加入啓発と、13歳未満へのヘルメット着用努力義務の啓発推進についてお答えいたします。
自転車利用者が加害者となり損害賠償を請求される事例が発生していることにつきましては、本市においても認識しており、その対策として、議員御指摘のとおりTSマークや自転車任意保険への加入が重要であると考えております。そこで、安全対策の一環といたしまして、ポスターやチラシ、リーフレットなどを作成し、市内の中学校及び高等学校などへ掲示を依頼し、啓発しているところであります。
また、自転車乗車中のヘルメット着用につきましては、交通安全キャンペーン時や交通安全教室において着用の必要性について指導、啓発を行っており、このような啓発活動は継続することが効果的であることから、今後も実施してまいりたいと考えております。
次に、③ 交通公園もしくはその機能を有する公園の設置と、子供たちや高齢者の集う屋内施設へ自転車シミュレーター等の設置についてのうち、市民・スポーツ文化局所管についてお答えいたします。
本市では、交通ルールやマナーの体験学習といたしまして、より多くの方に参加していただくため、いつでも、だれでも交通安全教育が受けられるよう、本市交通教育指導員による交通安全教室を出前形式で実施しております。議員御指摘の自転車シミュレーター設備を使用した体験学習が子どもから高齢者まで、楽しみながら学べることにすぐれていることは理解しておりますが、安全で適切な利用のための指導者の配置や設置された場所での学習と限定されるため、当面は交通教育指導員による交通安全教室を推進してまいりたいと考えております。
○中野君男都市局長 御質問の1 自転車交通の総合安全対策について、 自転車交通の総合安全対策における世代別安全教育と啓発について、③のうち、交通公園もしくはその機能を有する公園の設置についてお答えいたします。
さいたま市域内都市公園の整備については、市民の憩いや自然との触れ合い、スポーツ、レクリエーションや地域活動の場として、また防災の観点からも重要な役割を果たす都市公園を都市の緑の核、身近な公園の核と位置づけ、計画的に公園整備を進めております。
議員御質問の交通ルールを学べる交通公園等が他の自治体に設置されていることは承知しておりますが、交通公園の設置につきましては、他部局との調整を図りながら、市民ニーズやソフト面の運用方法、交通安全対策としての有効性など、他都市の先進事例を調査し研究してまいりたいと考えております。
次に、 自転車交通総合安全対策における自転車交通環境整備について、① さいたま市都市交通行政における自転車交通体系の策定の必要性について、及び、部局横断的なプロジェクトチーム編成の必要性についてお答えいたします。
議員も御質問の中にありましたとおり、本年10月25日付で交通管理者である警察庁交通局長より、良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の推進についての通達が、各都道府県警察長あてに出され、自転車の原則車両通行の徹底と自転車の通行環境整備の必要性について示されたところであります。この通達に基づき、埼玉県警察本部においては、今後、幅員3メートル未満の歩道における自転車通行の見直しや交差点部における自転車横断帯の見直し方針等について、自転車、歩行者の利用状況や周辺の環境などを考慮しながら検討していくと聞き及んでおります。
また、一方、国土交通省においては、去る11月28日に安全で快適な自転車利用環境の創出に向けた検討委員会を設置し、今年度中に同委員会から自転車利用環境創出ガイドラインの提案を受け、その後、警察庁と共同でガイドラインの策定を行っていくと伺っております。
本市といたしましては、こうした警察、国土交通省の動向を注視しながら、議員御指摘のとおり庁内においても多くの所管にまたがる施策であることから、他局横断的な検討体制や都市交通施策としての総合的な自転車交通施策のあり方について検討してまいりたいと考えております。