(1)避難所等におけるインターネットの活用について
1.避難所等におけるWi-Fi整備状況について
2.防災Wi-Fiステーション整備事業について
(2)水防災意識社会の住民目線のソフト対策について
1.まるごとまちごとハザードマップについて
2.タイムラインの策定について
私たちは、いつ起きるかわからない災害に備え、自助、共助、公助の連携で災害に立ち向かわなければなりません。平成26年、本市が実施したさいたま市被害想定調査によると、さいたま市で直下型地震が発生した場合、市全域の震度は6弱以上で、死者は2,000人に上ると想定されています。また、洪水によって荒川が氾濫した場合、被災者は約34万人、床上浸水は約6万8,000棟に上ることが想定されており、その被害を最小限に食いとめるためのリスクコミュニケーションが求められています。
平成23年12月、総務省の大規模災害等緊急事態における通信確保のあり方に関する検討会が公表した報告書によると、東日本大震災の発災時に固定電話で連絡がとれた人の割合は56%であるのに対し、SNSなどのインターネットで連絡がとれた人の割合は86%となっており、固定電話や携帯電話が通信規制により利用できない場合でも、公衆無線LAN等を通じてインターネットにアクセスすることにより、災害情報を効果的に発信、受信することが可能であることが明らかとなりました。
一方、昨年5月に総務省のテレワークやWi-Fi等の活用に関する研究会が公表した報告書によると、Wi-Fiの普及状況は、庁舎施設で9%、避難所で1%、避難場所では0.1%と、公共施設を中心にWi-Fiの普及がおくれている状況が明らかになりました。外国人観光客らのニーズが高く、経済効果が見込める施設は民間事業者にワイファイ整備が望めますが、防災拠点のように、いざというときの備えは自治体主導で進めなければな
りません。
そこで、まず1点目として、大規模災害時に重要な役割を果たす本市の庁舎、学校、公民館といった避難所等におけるWi-Fiの整備状況についてお示しください。
2点目として、被災した多くの市民が不安を抱え、情報を求め集まってきたときに通信手段をどのように確保しようと考えているのか、検討状況をお聞かせください。
次に、防災Wi-Fiステーション整備事業について伺います。
総務省では、避難所等の防災拠点における公衆無線LAN環境の整備を推進しており、地域公共ネットワーク等強じん化事業補助金交付要綱の中で、観光・防災Wi-Fiステーション事業を実施する自治体に対して事業費を補助しています。国庫補助率は2分の1となっております。これまで都道府県では京都府や福岡県、滋賀県などが、政令市では川崎市、熊本市が既にこの事業を活用しております。熊本市では、区役所と指定避難場所の公共施設8カ所に20カ所程度のアクセスポイントを設けることとし、国から2,100万円の補助金を得て、約4,300万円の事業を推進しておりました。本市においても、大規模災害に備え、国庫補助事業を活用した防災Wi-Fiステーションの整備を図るべきと考えますが、見解をお聞かせください。
○高見澤章総務局長 神坂達成議員の御質問の1 災害リスクコミュニケーションについて、(1)避難所等におけるインターネットの活用についてお答えいたします。
まず、①避難所等におけるWi-Fi整備状況につきましては、現在、公共施設41カ所に整備しております。そのうち避難所に指定されております施設は、コミュニティーセンターや市民会館等の5カ所でございまして、これは全避難所258カ所の約2%に当たります。今後の公共施設におけるWi-Fi整備事業につきましては、第四次さいたま市情報化計画において公衆無線LAN環境の整備を施策の一つとして位置づけ、本年度、その整備計画を策定することとしております。
御質問の避難者の通信手段の確保についてということでございますが、現在のところ、避難所に順次設置しておりますNTT特設公衆電話回線、あるいは通信事業者が避難所に臨時に設置を行いますWi-Fiスポットを使用することとなります。
次に、② 防災Wi-Fiステーション整備事業についてでございますが、この事業は災害時の情報収集等の利便性を高めるために公共施設や避難所等に無線アクセス装置を搭載した鉄柱等の施設を整備するものでございます。事前の登録が不要であり、複雑な操作をすることなくインターネット環境に接続することができる特徴があるため、災害時において有効な通信手段であると認識いたしております。また、太陽光パネルですとか、災害時に発生する停電時にも運用できますし、電光掲示板のようなサイネージを設置することで、スマートフォン、タブレット端末をお持ちでない方でも情報伝達することができるものと考えております。
一方で、不特定多数の人が匿名で接続することにより、成り済ましの危険性があることですとか、個人情報あるいはパスワードの漏えいというセキュリティーの問題も生じてございます。そのため、国庫補助対象となります導入費用の問題だけではなく、平常時の活用方法も含めた費用対効果の検証とともに、御紹介いただきました他の自治体の先進事例なども踏まえまして、本市といたしましてのWi-Fiステーション整備の検討をしてまいりたいと考えております。
○神坂達成議員 次に移ります。水防災意識社会の住民目線のソフト対策について伺います。
ハザードマップは、河川が氾濫した場合に素早く、そして安全に避難できるよう、まちの危険性を事前に把握する上で極めて有効な方策です。しかしながら、平成22年1月に内閣府が公表した防災に関する特別世論調査では、ハザードマップを確認した人はわずか30%にとどまっています。近年、全国各地で観測史上最大の降雨が更新されている実情を踏まえると、今後はハザードマップに関する情報を住民にわかりやすく提供することが重要かつ喫緊の課題ではないでしょうか。
こちらをごらんください。
これは、まるごとまちごとハザードマップが設置されている戸田市で撮影したものです。上の赤いテープが想定浸水深、下が標識となっています。こちらが標識です。想定浸水深とともに荒川の氾濫時避難場所が明記されております。
このまるごとまちごとハザードマップは、国土交通省が行っている施策で、生活空間である町なかで実際の洪水をイメージしてもらうため、屋外に浸水実績や想定浸水深、さらには避難所の方向などを設置するものです。日常的にこのあたりまで氾濫水が及ぶ、どこに避難すればよいといった意識を住民に持ってもらい、水害時における速やかな避難行動につなげるものです。この取り組みは、平成18年に東京都北区において先行的に実施され、現在では多くの自治体に広がっています。政令市では横浜市、名古屋市、福岡市、近隣自治体では川口市や戸田市において実施されています。
鬼怒川の豪雨災害を踏まえ、現在、国において水害対策に関する検討が行われており、昨年12月にはハザードマップに関する情報をまちの中へ表示すること。つまり、まるごとまちごとハザードマップの取り組みを速やかに実施すべきとの方針が示されました。気になる事業費ですが、川口市に調査を行ったところ、平成25年から平成30年までの事業として300カ所に標識を整備する予定であり、その費用は191万円で、1標識当たりの費用は
約6,000円ということになります。さいたま市においても、河川管理者である国や県と協力して、被害リスクの高い地域から、順次、まるごとまちごとハザードマップを導入すべきと考えますが、見解をお聞かせください。
次に、タイムラインの策定について伺います。タイムラインは、大規模な水害に備え、いつ、誰が何をするのかをあらかじめ時系列で整理した防災行動計画です。国、地方公共団体、企業、住民等が連携してタイムラインを策定することにより、災害時に連携した対応を行うことができます。
国土交通省は、平成26年4月に国が直轄管理する河川で避難勧告等の発令に着目したタイムラインを策定し、タイムラインの普及、検証を実施するとの方針を打ち出しました。現在、本市において洪水ハザードマップが策定されているのは9河川となっていますが、タイムラインが策定されているのは荒川のみとなっております。荒川以外の河川でもタイムラインを策定し、水害に立ち向かうべきと考えますが、見解をお聞かせください。
○高見澤章総務局長 次に、・ 水防災意識社会の住民目線のソフト対策についてお答えいたします。
まず、① まるごとまちごとハザードマップについてでございますが、安全かつスムーズな避難につなげるために町なかに洪水関連標識を標示するガイドラインを、御指摘いただきましたように国土交通省河川局が策定しているものでございます。本市においては、生活空間における浸水区域がわかる目安として、災害対策基本法の改正に伴う指定緊急避難場所等の指定に伴い、指定緊急避難場所及び指定避難所の標識や誘導板を順次更新しているところでございますが、その際、河川の浸水想定により洪水時には利用できるところと利用できなくなるところの明確に標示をしているところでございます。議員御指摘のとおり、昨年12月の社会資本整備審議会で大規模氾濫に対する減災のための治水対策のあり方についての答申が出され、この中で、まちの中に想定浸水深の標示をすることが求められております。本市において最大の被害が想定される水害は荒川の氾濫でございますが、昨年の鬼怒川の堤防決壊による大規模浸水被害を教訓に、河川管理者であります荒川上流河川事務所において想定浸水の深さや範囲について見直しを行い、つい先日、5月30日でございますが、公表されたところでございます。今後はこの新たに公表されました河川管理者からの情報をもとに、想定浸水地域内の、例えば電柱広告、今、映像を見せていただきましたけれども、そういった電柱広告などを用いて標示することについて着手してまいります。
次に、② タイムラインの策定についての御質問ですが、大規模な水害に備えて、河川の水位等を目安に市町村長等は避難勧告等をタイミングよく発令できるように時系列に整備したものが避難勧告等の発令に着目したタイムラインでございます。本市が洪水ハザードマップを作成している河川の中には、避難判断の指標となる水位観測地点が市外にあるものもあり、避難勧告等の発令のタイミングが難しいものがございますが、荒川以外の河川におけるタイムラインの策定につきましては、河川管理者でございます国や県の十分な調整を行いながら検討してまいりたいと考えてございます。
○神坂達成議員 ただいま、まるごとまちごとハザードマップについて「着手する」との御答弁をいただきました。一日も早い着手をお願いしたいと思います。